「あ、花火してる」
静かに停まった車の中で、ふいに修ちゃんがつぶやいた。
閉じてた目を開けると、窓の向こうの空の中に黄色とオレンジ色の輪っかが小さく見えた。
「ほんとだ。こんな時間までなんて、めずらしいね」
「?見てく?」
「うん」
私が首を振ると、修ちゃんは意外そうに笑って私の頭を撫でた。
「汐、花火好きだったっけ?」
「・・・・うん」
「あれ?苦手なの、治った?」
「うん」
花火が苦手なこと、修ちゃんはしっかり覚えててくれてたんだ。
本当は・・・、
花火は・・・苦手だよ?
だけど、今は夜空も少し・・・・苦手。
夜空に鮮やかに広がる星達が・・・苦手。
この数年・・・あまり見ないようにしてるから。
思い出さないように。
ココロの奥の気持ちを感じないために・・・・。

