メニューはすき焼き。 後は、春菊を切って…鍋を火にかけるだけだよね……。 「そろそろだよ」と声をかけかけて、ふと、凱の方に目を向けると、窓際でこちらに背を向け誰かと話してる様子だった。 ま、いっか。 そのまま、カセットコンロに鍋をセットして、材料を入れはじめた時に、ふいに後ろから伸びてきた腕に体を抱きしめられた。 「ど、したの?凱?」 「なんでもない。ちょっとこのまま、しばらくこうさせてて…」 髪に触れる凱の吐息まじりな声が、私の耳元に低く響いて、びっくりするよりも思わず目を閉じた。