「凱、ありがとう」
用意してあったTシャツと短パンに着替えて出ると、彼はフローリングの床に直接置かれたテレビを見ていたところだった。
「ん・・・・」
凱はぶっきらぼうに返事すると、私の横を通ってバスルームに消えた。
今だ振り続ける、雨の音が響く部屋の中で、私はぐるりと周りを見渡した。
殺風景な・・・・
うん、まさにその言葉がぴったりと言う感じ。
私の知ってる普段の凱は少しお調子者で楽しくて・・・・
けど、この部屋がそんな彼のものだとは、にわかには信じられないほど、そのギャップは大きく感じた。
思わず大きく深呼吸をした私の目の前の、小さなたんすの上・・・・・・
「あ・・・・」
あの、キーホルダーが、置いてあった。
それは私がもらったものと本当に形は同じで。
けど、擦り切れたような細かい傷で、私のよりも少しくすんでいるようにも見える。
それだけ、凱がずっと身に着けてた、ってことなんだろう。
そっと、手を伸ばし、ぱちんと中を開いて見る。
そこも、私のものと同じ・・・・ううん。ぱっと見た感じは同じだけど・・・・
「位置が・・・違う」
盤の中に、ちりばめられた星空のような輝きの中で、少し他よりも大きく輝いている星の位置。
そこに微妙に違和感を感じて、私は必死に自分のものを思い出そうとしていた。
この凱のキーホルダーのものは、位置からすると・・・・
「アルタイル?」
他から少しだけ大きく縁取られた三つの星。その中でより明るい石をはめられたその星は、あの夜、彼が好きだと言っていた夏の大三角形のひとつ、「アルタイル」であるということが想像できた。

