「俺は、親父の思い出から逃げようとしてたんだ。そしてお前からも。全部忘れたかった。あの頃の楽しかった思い出は全部なかったことにしたかった・・・」
そういうと、凱は私の肩を掴んで、体を離した。
そして、大きく息を吐きながらうつむいてこう言った。
「けど・・・そんなの無理なんだよな。思い出を消すなんて出来ない。親父のことも、お前のことも、本当は忘れるなんて絶対に出来ない大切な俺の過去なんだ、って・・・」
「凱・・・」
「消すなんて出来ない・・・・お前のこと好きだっていう気持ちも」
胸の奥がつかまれるように痛い。
切ないのが、こんなに苦しいなんて思ってもみなかった。
頬に、また涙が流れていく。

