その声が遠ざかってからも、体の震えは止まらなかった。
「汐?」
修ちゃんだ。
行かなきゃ…。
立ち上がろうとしたけど、ひざに力が入らず、思わずよろけた拍子に、かばんが床に派手な音を立てて落ちた。
こぼれたキーホルダーがコロコロところがって、私の足元で止まった。
瞬間。
時間がゆっくりと逆回転し始める。
それは、さっきの凱の表情から、昨日のキスを通り過ぎ、だんだん加速度をましていく。
合宿。
高校での再会。
……あの体育館での別れ……
そして…
あの時二人で見た…空。
思わず閉じていた目をゆっくり開くと、目の前のキーホルダーが光をうけてキラキラしていた。
それは、星のようにも見えて……
「アルタイル…」
あの時、凱が好きだと言った星の名前をつぶやいた。

