修ちゃんは、一瞬驚いたような、それでいて切なげな表情を浮かべたけど、その後はただじっとその箱を見つめていた。
そう。
あの夏の日に修ちゃんからもらったもの。
中には・・・はめることのなかったリングが入ってる。
「これ・・・ずっと返そうって思ってた。なかなか返せなくてごめんね。・・・私、修ちゃんに甘えてて・・・・でもこのままじゃ絶対失礼だと思うし・・・だから・・・・・」
修ちゃんは黙ってその箱から視線をそらさずにいたけど、
軽く目を閉じてから私の方を見つめた。
「・・・・・わかった・・・・・・」
かすれた修ちゃんの声に、ぐっと詰まりそうになったけど、なんと言葉を絞り出した。
「ごめんね・・・でもすごく嬉しかった。修ちゃんの言葉も、指輪も。すごくすごく嬉しかったよ」
「・・・もう、いいよ・・・・」
「ごめん、なさい・・・・」
そうして、頭を下げた。
・・・頭を下げたところで許されることではない。
けれど、他にどうしていいのかわからなくて。
鼻の奥がツンと痛むけど、必死でそれをがまんしながら、目を閉じた。

