「汐、寒くなったから・・・・中入ろ」 修ちゃんが持っていたシャツを私にかけて、肩をそっと抱いた。 凱は何も言わずにペンションの扉をめがけて歩き出す。 「凱!」 さっき言いかけた彼の言葉は、なんだったのか。 私は思わず大きな声で彼を呼んだ。 「あの時なんて?」 肩を抱く修ちゃんの力が少し強くなったのがわかったけど、止まらない。 凱は後ろ手に手を振って、そのままペンションのドアの向こうに消えていった。