「選ばせてやる。
 そいつをこっちに渡すか。
 それともここでくたばるか。
 二つに一つだ」


俺は情けなく顔をしかめて笑った。

苦笑というにもほど遠い、みっともない顔つきになっていることだろう。


「悪いがお前にやれる
 選択肢を俺は
 一つしか持っていない」

「ひとつ?」


俺は軽くうなずいた。


「こいつは諦めてくれ」


本当にそうとしか言いようがない。

俺には武器もないし、戦うすべもない。

思い出せる限りで言うと、最後に喧嘩をしたのは高校一年の頃だ。

しかも、負けた。

よく自分でも生きてこられたなと感心するほど、俺は無力だった。


「ふざけてるのか?」


キツネが恐い顔で言った。