キツネが俺と同じように屋上の手すりをひょいと飛び越えて、

こちら側に立つ。


「オレを覚えててくれた
 ようで嬉しいぜ?」

「あの時は悪いことをした」


俺は素直に詫びた。

キツネのこれまた細い眉がひょこんと跳ねる。

キツネは。

俺が自分の手で傷つけたただ一人の人間だ。

キツネの腹にはまだ傷が残っているだろうか。

思って、俺は尋ねてみた。


「あの時の傷は
 まだ残っているのか?」

「残ってるさ。
 致命傷ってほど
 じゃなかったけどな。
 かなり痛かったんだぞ」

「そうか。それは悪かった」