ガタッという音が耳の奥に響いた。

目を開くと同時に、ずた袋と鉢植えをかかえて立ち上がる。


「ちぇ」


残念そうな声。

俺はそっちを見た。

俺のほうが、ちぇっと言いたくなる。


「見つかっちまったかよ」


同感だ。

茶色の長い髪、吊り上った細い瞳。

どこをとっても、キツネ。

俺は奴をキツネと呼んでいた。

本当はなんという名なのかなど知らない。

聞いたこともないし、教えられたこともないからだ。

もちろん聞くつもりもなかった。

キツネはキツネだ。

それでいい。