サクラはまたその変わった意見を口にする。


「忘れちまうことを罪だって
 思わなくてすむだろうが」


少し苛立った様子だ。

が、アオはまた問い返さずにはいられない。


「忘れることは罪なのか?」

「罪だな」


一瞬の間もなくサクラは答えていた。

まるでアオの問いも自分の答えも、

はなから知っていたかのような速さにアオは驚く。

驚いているアオにサクラは鼻をならした。


「たとえば俺は、思うんだよ。
 自分が死んじまったとして、な。

 俺の周りにいた奴らが
 俺のことを思い出にして
 楽しくしてるのを、
 本当に喜べるもんなのか
 ってさ。

 天国から見守ってるだとか、
 なんでわかる?

 天国なんて嘘くせぇ代物、
 俺は信じたりできねぇな。

 誰だって
 忘れられたくねぇはずだ」

「生きてりゃまた会えるだろ。
 思い出が、現在に引き戻される
 ことだってあると思うな」

「俺は忘却の罪について
 語ってんだぜ?」


サクラはおおげさに肩をすくめ、頬杖をつく。