アオはサクラと話しているといつも疑問符を語尾につけてしまう。

サクラの言っていることがあまり理解できないせいだった。

だいたい今のようなことを言う奴自体、最近では珍しいのだ。

みんな均一的で、はみ出し者は嫌われる。

目に見えて迫害はされなくても、

結局はどこのグループにも属せないのだ。

みんなが思うことが正しくて、みんなの言うことが正論で、

少数の意見など聞いてももらえない。

それが世界の正しい在り方なのである。

秩序は「みんな」によって保たれていた。

同じ方を見て同じ方へ歩いていなければ、

「変わり者」と称され、仲間からは外される。

すべての人が仲間意識の毛布にくるまっている世界で、

サクラは間違いなく変わり者だった。

アオ以外の奴らはとっくにサクラから

仲間意識の毛布を取り上げてしまっている。

けれど、アオにはサクラがそれで困っているようにも思えなかった。

入学当初から他の学生とつるまず独りでいたサクラに、

自分から声をかけたのはなぜなのか、

アオはきっかけすら思い出せない。

今ではアオも仲間から外されていた。

二人して大学では異邦人なのだ。

その点だけ、一般的ではないアオだった。