狂者の正しい愛し方




きっと疲れてたんだ。



私は自分自身に、そう解答する。

押そうとしたのなんて、所詮“押そう”としただけ。
実際にやったわけじゃない。


勉強とか家庭事情とか佐薙さんの面倒見たりとかでストレス溜まってたから、あんな嫌な想像しただけだ。うん。

あ、寧ろ面倒見られてるのは私か。


さっきだって、佐薙さんに声をかけられなかったら、私はどこまでやったんだろう?



……悪趣味だ。私も。

頭を強く振って、変な考えを吹き飛ばす。

今日はこんな嫌なことを考えるために来たんじゃない。
佐薙さんと遊ぶためなんだから。


ちゃんと前を向いて、もとの自然な笑顔を装って、佐薙さんの隣に寄り添う。

今の無理矢理の笑顔だって、きっとすぐに自然な笑顔に戻るはずだもんね。