「なっ、なんでもないです!!
ほら、ちゃっちゃと渡りましょう!!」
周りに見られてるのが恥ずかしくて、私は半ば無理矢理、佐薙さんの手を振りほどく。
佐薙さんはきょとんとした顔を見せて、横断歩道を渡り始める私に、大人しく続いた。
……どっちが彼女か分かんないねこれ。
「晴姫、さっき、どうしたんだ?
手の平を見つめていたけど、何かあったか?」
行動は大人しくとも、言動はいつも通り。
私の様子が少しでも変なら、気にせずにはいられない。
それが佐薙さんだ。
でも、素直に答えて余計困らせるなんて、私にはできない。
そもそも、心配なんかしてほしくない。
「別になんにも?
ちょっと自分について考えてただけです。哲学的に!」
「哲学的に?」
「はい!」
だから、大嘘かますのも許してほしい。



