「? 晴姫、どうした?」
「う、え?」
私が突っ立ったまま動かないものだから、佐薙さんがわざわざこっち側に渡って来てくれた。
吃驚して顔を上げると、そこには同じく吃驚した佐薙さんの顔。
と言っても、佐薙さんはもともとそんなに喜怒哀楽がはっきりしてるほうじゃないから、無表情に少し吃驚を混ぜたような感じだ。
私が見つめていた手の平を取ると、覗き込むように腰を屈めて、
「晴姫が渡って来ないから心配した。
大丈夫か?具合でも、悪いのか?」
本当に心配そうに訊ねてくれた。
握られた手に力がこもる。
「え、あ……いや……。」
顔に、熱が集まる。
それと一緒に、周りの人の視線も大いに集まる。



