「晴姫!」 ハッと意識が頭の中に蘇る。 手は寸でのところでピタリと止まり、顔を上げれば横断歩道の向こうに、軽く手を振る佐薙さんの姿が。 あ、今日はジャケット着てる……。 格好良い……。 なんて思ってる間に、 パッと、信号が青に変わった。 信号待ちをしていた人はぞろぞろと渡り始め、 「そうそう、んでさー!」 私の目の前に立っていた男の人も、相変わらずの大きな声を出したまま渡り出した。