狂者の正しい愛し方



一歩、左に移った。


男の人の真後ろに立つ。

男の人は、未だ談笑中だし、周りの人も各々別の場所に視線を向けている。



大丈夫、今なら。


心のどこかで、そう思った。



ゆっくり、両手を前に出して、手の平を広げて、


男の人の背中に狙いを定める。


トラックを含む自動車達が、流れるように横断歩道を走り去って行った。



もとの車通りとなっている道路。

何も知らない人。

両手を構える私。