なおも首をかしげると、佐薙さんは微笑んだ。

それがいつしか“誤魔化し”を含んだ笑みだと気付いたのは、昨日今日の話じゃない。

でも、私は言わなかった。


「これからゆっくり分かればいい。じゃあ、おやすみ晴姫。」


首へのキスは別れの合図。


少しくすぐったさを覚え、小さく声をもらすと佐薙さんは笑った。



「…じゃあ、おやすみなさい、佐薙さん。」


「明日は日曜日だから、どこか出かけような。」


「はい!」


唇が、顔が離れて、解放された私は家に爪先を向ける。

佐薙さんに手を振りながら、玄関へ歩いた。


「また明日、晴姫。」


佐薙さんの一言が嬉しくて、私も夜だというのを忘れ、声を上げて返した。


「大好き、佐薙さん!」