狂者の正しい愛し方



ナイスタイミング、だ。晴姫。



「ごめんね、待たせましたよね佐薙さん!
トイレ混んでて……!」


手をハンカチで拭きながら、晴姫は申し訳なさそうに走って来た。


ああ、数分ぶりに見る晴姫だ。

可愛い、可愛い、愛しい、愛しい、どうしてこんなに眩しいんだろう。


顔も知らない女と、大事な大事な晴姫。
どちらと言葉を交わしたいかと訊かれたら、俺は迷わず後者を選ぶ。

だから、電話を切った。


電源を切ることも忘れない。

もう、邪魔が入らないように。




「おかえり、晴姫。」