《……じ、冗談はやめなさい……!》
その声に最早威勢はなく、母親のほうが、“俺の発言が嘘であってほしい”と祈るようだった。
「冗談で言うとお思いですか?」
《当然でしょう…!!
ど、どうせ貴方……っ、晴姫を誘拐しようとか考えているんでしょう…!?
そうでもなけりゃ……、》
「俺が本当に誘拐するつもりなら、晴姫と出会った1年前に、とっくに実行しています。」
《そ、それに、貴方、知っているの!?
あの子は…っ、晴姫はねぇ……!!!》
半ば混乱気味のその声が何を言おうとしたのか、俺にはすぐに理解できた。
娘と全く接しようとしない母親かと思っていたが、なるほど、“これ”は知っていたのか。
そう考えると、笑いが止まらなくなった。



