そこで、電話向こうで母親が息を飲んだのが分かった。
《良い思いって……、まさか、娘と援交してるんじゃ……っ!》
「は?いえ……。」
どうしてそう飛躍するんだ。
全く考えが掴めなくて苛立ってくる…。
「さっきも言いました通り、俺と晴姫は“恋人同士”です。
援助交際だなんて。有り得ません。
…こっちは、晴姫に指一本出していないのに。」
まだ俺と晴姫は“完全”じゃない。
心が一体にならないと……彼女が、俺だけを見てくれないと、晴姫は体だって許そうとはしない。
まだあの子は、怯えた子羊のようなものだ。
これから徐々に、俺が慣らせていかないと。
……当然、この心の声は晴姫の母親には伝えない。
こればかりは、俺だけの秘密だ。



