√番外編作品集

「だって文化祭近いし、なんとなく他のクラス入りにくい。でさーB組ってこの前うちからポスカセット借りていったじゃん、あれ返してもらったっけ?」

話は文化祭の用件だったのか、敦ちゃんは山岡ちゃんと文化祭の話をして一段落ついたらやっと俺を見た。

敦ちゃんは最近開襟してる。

暑いから俺も開襟してるけど。(っていうかタイ締めると暑い。死ぬほど暑い)

開襟した胸元に、キラキラ光るものがあるのを俺はしっかりチェックしてる。

いつ頃だったかと逆算してみると、夏休みが始まる前。

花火大会の時にはもうつけてた。敦ちゃんがオシャレなのはよーく分かっているが、女の子が毎日ずっとつけているアクセサリーというのは時に自分が似合うからという以外に意味があったりするから──

「ぶへっ」

ぼやっとしていると敦ちゃんがから軽い一撃が飛んでくる。

「どーこをジロジロみてるのかな、バカワダ」

「敦ちゃんの自由奔放なバスト」

「正直に言えば許してあげるとは言わなかったよ」

頬を引っ張られて、それから敦ちゃんは俺の視線を逃れるようにポケットからリボンタイを引っ張り出して結んだ。
「いや、そのネックレスさ~最近ずっとしてるなーとか」

「かわいーでしょ、ティファニーのオープンハート! 本物だよ!偽物じゃないんだから」

敦ちゃんは突然笑顔になって、しまい込んだ胸元からもう一度ネックレスを引き出した。

「なになにーもしかして黒沢からもらったのー?」

冗談でそう言ったら、敦ちゃんは笑顔で一度だけ頷いた。

えっ──マジ

思わず山岡ちゃんを見ると、山岡ちゃんも表情が固まっているのが分かった。

「え、ちょっと、別にそういうんじゃないよ。誕生日のプレゼントだってば」

敦ちゃんもはっとして山岡ちゃんの前で上下に手を振った。