「ちゃんと、北川さんのこと大切にしたんだね河田くん」
「うん俺なりにね。南都美にも話したんだーずっともやもやしてたこと」
山岡ちゃんの空気は不思議だ。
これが俺が彼女をミステリアスだと思う理由だと思うけど。
「一番に言われたことはさ」
メニュー一覧を山岡ちゃんに返しながら、俺は笑いながら続けた。
「"康平、一期一会の使い方間違えてる"」
南都美の顔がぼんやりと頭に浮かぶ。
「私に会ったことを、もっと大切にしてって。山岡ちゃんに言われたことと同じこと言われた」
山岡ちゃんは丁寧にお弁当箱を包むとゆっくりと立ち上がった。
「それが本当の、一期一会だね」
「あー千恵ー!」
遠くから声がして、視線をなげると夏の日差しの中にピンク色のカッターシャツが浮く。
敦ちゃんだ。
「おはよー敦ちゃん、今日は朝ウチ来なかったねー」
俺が手を振ると敦ちゃんは意外そうな顔をしてみせた。
なんで俺が山岡ちゃんと一緒にいるのかという顔だ。


