一途に思うことができるのが、羨ましいと思ったから。
康平はそんなことを考えながらも、口にはしない。
「黒沢がずっと探してたよ。敦ちゃんのこと。心配してたよ。この前、コダちん…古文の江古田に怒鳴られた時だって、黙らせてこいって言ったのはあいつだよ? 敦ちゃんになんかあったらそれに気づくのだってあいつだけじゃん」
康平は、感情的に怒鳴ったことを詫びるかのように声のトーンを落としてゆっくりと話を続けた。
「それじゃダメなわけ? それだけじゃ敦ちゃんは足りないの? どうしても世界で一番お前だけって言葉や恋人っていう枷が必要な訳?」
「そうじゃない」
「口だけだったらいくらでも言えるんだよ。手だってだそうと思えばいくらだって出せるよ。でも守ることって、その両方よりずっと難しいんだよ? 」
「しょうがないじゃん潤は好きだよ。比べものにならないくらい好きだよ。だけど」
手が震えていて体が震えて、敦子は続きの言葉が出なかった。
「潤みたいに強くないよ。優しくだってされたいし、潤に頼れない時は別の誰かに頼ったっていいじゃん!」
「頼ったっていいよ。堀口さんがそれできないと思ってるわけじゃないし。だから、ちゃんと黒沢に伝えて、気持ちに区切りつけて欲しいんだよ」
康平はあくびを喉の奥に押し込んで続ける。
「二股のプロの俺が言うよ。卑怯な二股っていうのは、いいとこ取りだけするヤツのことだよ。堀口さんに愛されて、黒沢からも守られて、リスクもなく両方好きだなんて言うのは、あとで両方失うよ」
康平はため息をすると、栗色の髪を掻きむしった。
「俺が言いたいのはそれだけ。ちゃんと言ってね。頼むよ」
トントン、とはきつぶした上履きが音を立てて階段を降りていく。
「俺、敦ちゃん嫌いになりたくないから」
康平はそんなことを考えながらも、口にはしない。
「黒沢がずっと探してたよ。敦ちゃんのこと。心配してたよ。この前、コダちん…古文の江古田に怒鳴られた時だって、黙らせてこいって言ったのはあいつだよ? 敦ちゃんになんかあったらそれに気づくのだってあいつだけじゃん」
康平は、感情的に怒鳴ったことを詫びるかのように声のトーンを落としてゆっくりと話を続けた。
「それじゃダメなわけ? それだけじゃ敦ちゃんは足りないの? どうしても世界で一番お前だけって言葉や恋人っていう枷が必要な訳?」
「そうじゃない」
「口だけだったらいくらでも言えるんだよ。手だってだそうと思えばいくらだって出せるよ。でも守ることって、その両方よりずっと難しいんだよ? 」
「しょうがないじゃん潤は好きだよ。比べものにならないくらい好きだよ。だけど」
手が震えていて体が震えて、敦子は続きの言葉が出なかった。
「潤みたいに強くないよ。優しくだってされたいし、潤に頼れない時は別の誰かに頼ったっていいじゃん!」
「頼ったっていいよ。堀口さんがそれできないと思ってるわけじゃないし。だから、ちゃんと黒沢に伝えて、気持ちに区切りつけて欲しいんだよ」
康平はあくびを喉の奥に押し込んで続ける。
「二股のプロの俺が言うよ。卑怯な二股っていうのは、いいとこ取りだけするヤツのことだよ。堀口さんに愛されて、黒沢からも守られて、リスクもなく両方好きだなんて言うのは、あとで両方失うよ」
康平はため息をすると、栗色の髪を掻きむしった。
「俺が言いたいのはそれだけ。ちゃんと言ってね。頼むよ」
トントン、とはきつぶした上履きが音を立てて階段を降りていく。
「俺、敦ちゃん嫌いになりたくないから」


