√番外編作品集

康平は言って、問答無用で敦子の手を掴んだ。

「ちょっとやめてよ、授業あるんだから」

康平は敦子に拒否権を与えなかった。引きずるようにして教室から廊下に出て、階段を上っていってしまう。

千恵が追いかけて来たが、康平は階段を上がったところで「ここまで」と千恵の介入を拒否する。

「授業さぼっちゃダメだよ、山岡ちゃん。俺サボるから代わりに出てもらわないとノート移せないし。頼りの黒沢も家で寝てるんだろうし」

「でも、敦子のこと」

「ちゃんと話したいだけだって2人で。俺信頼ないのかな」

「私は別に河田君に話なんてないけど!」

敦子が噛みついてくるが、康平は手を掴んだまま敦子を話すつもりはない。

屋上で行き止まりになった階段上フロアで、河田はひらひらと千恵に手を振った。

千恵はしばらく戸惑っていたが、階段をゆっくりと下りていく。予鈴が鳴り、千恵の姿が見えなくなったところで、康平はやっと手を離した。

「でさ、何だったの? 家出? 本気で朝帰り?」

「それ聞いてどうすんの? 藤田かなんかに情報でも売りたい訳?」

「藤田とかどーでもいいよ。ただどうしたのか聞きたいだけ。堀口さんと付き合うことにしたんでしょ? 俺はいいと思う~堀口さんみたいな気の回る人と付き合う方がいいと思うし。もしくは俺とかね」

階段の踊り場で、壁に背を預けて康平は肩をすくめた。

冗談が付け足されていても、敦子はそこに食いついてはこない。じっと康平を睨み付けるようにして見ていた。

話をするために付け足した冗談は、もう不要だと康平も悟る。

屋上は夏の事件以降施錠されていて、あがることはできない。教師が屋上にあがることはないと思うが見つかったら怒られるに違いない。

だが康平も敦子ももうそんなことは眼中にない。