√番外編作品集

康平の前の席は空っぽだ。

「あー黒沢は休みかも、そーだ。敦ちゃんは?」

「敦子? 敦子はまだ顔出してないよ」

いつも朝のホームルーム前に必ずクラスに顔を出すのに姿がない。

まだ家に帰っていないのだろうか、となると本格的な事故や事件なのだろうかと康平が考えたところで、千恵が「D組」見てくる、とニコニコと教室を出ていってしまった。

千恵がD組へ顔を出すと、教室には敦子がいる。

時間がなくて顔を出さなかっただけかと思ったが、敦子は千恵がクラスを覗いていることに気づいて一度は視線を合わせたのにパッと逸らした。

その反応は敦子らしくなくて、千恵はD組に入って声をかけようとしたが、予鈴が遮る。

後ろ髪を引かれながらもB組へ戻ると、河田は机に伏して寝ていたし結局潤がやってくる様子もなかった。

何か変だ。

千恵は不穏な空気を感じ取って、ホームルーム中に潤へメールを打つ。

それと寝ている河田にも「起きて!」とメールをしたが1限が終わるまで教師が何度肩を揺すっても起きる様子はなかった。

しょうがないので千恵は1限が終わると改めてD組へ向かう。

「敦子」

クラスに入って声をかけると、敦子は視線を一度だけ合わせてすぐに逸らす。

「朝クラス来なかったね? どうしたの? 潤も休みだし、河田君なんか……」

「潤が体調悪い? なんで? 映画はあんなに元気そうに見てたじゃん」