√番外編作品集

「潤! もう遅い時間だから大丈夫よ。敦子の裏拳はすごいんだから」

「いいから、見つかったらすぐ連絡するから待ってて」

「ダメ、敦子も潤も心配なんだから心配事増やさないで」

その言葉に潤が静かに振り返ると、泣きそうな叔母に小さくため息をした。

「心配なんでしょ、敦子のこと」

芙美にはこの言葉が一番効果的だと潤は知っていた。何か言われる前に、玄関を閉める。

白い息が、風に流されていく。

「しょうがないヤツ」

黒沢潤は、歩きながらケータイを手にすると手の空いてそうな康平へと電話をはじめた。

最寄りの地下鉄B5番口で待ち合わせをして、康平と合流する。

映画に来なかったことを一言だけ釘をさすと、河田康平は「バイトだったんだもん」と言い訳をして、コンビニの袋を黒沢潤へ差し出した。

ビニール袋の中は、オレンジジュースが2本収まっていた。

約束のものだ。

「で、山岡ちゃんと映画みて、どう? どうどう?」

「何がだよ、泣いてたよ山岡は」

あんなものでどうして泣くんだ、と潤は思ったが、そこまで言うと相手の感受性を否定することになるので心の中だけに止めておいた。

「あぁ、慰めたかったなぁ」

変な趣味をしてるな、と潤はヘルメットを受け取って康平の背を押した。

「さて、夜遊び敦ちゃんを探しにいきますか」