その涙の理由が映画の内容でないことを知っているのは、俊彦だけだった。
「…ッ………グス……」
「……泣けるよな、この映画。何度観ても」
「ゥ……グス……うん……」
敦子は必死に涙の理由を、映画の内容にしようとしているのだと俊彦は分かっていた。だから知らないふりをしてみせるのが精一杯だった。
2人にとって二度目の上映が終わると、敦子は泣き顔を隠して笑ってみせた。
「やだ、マジ泣きして、化粧落ちちゃいましたーちょっと直してきます」
「待って。大丈夫だから」
俊彦は思わず敦子の腕を掴んで止めた。
「大丈夫じゃないですよ、男の人の化粧に関する"大丈夫"はマジで信用ないんですからーマスカラ落ちてパンダになってても気にしないとか言うし」
「そうじゃない。──そうじゃ、なくて──」
俊彦は何と言えばいいか分からず少しだけ視線を下げた。
化粧室に行って、この子は1人で泣くに違いない。
回りがいくら涙目だからってそれこそ敦子の言う「マジ泣き」と、「映画を観て泣いた涙」は違う。
ここで彼のことで泣いたらこの後が持たないとか、自分に悪いとか
どうせそんな事を考えているに違いない、俊彦はそう考えていた。
「1人で泣くな、飯島」
ぎゅっと腕を掴むと、その力強さと体温に神経でも触れられてしまったかのようにぺたんと敦子はイスに座ってしまった。
「…ッ………グス……」
「……泣けるよな、この映画。何度観ても」
「ゥ……グス……うん……」
敦子は必死に涙の理由を、映画の内容にしようとしているのだと俊彦は分かっていた。だから知らないふりをしてみせるのが精一杯だった。
2人にとって二度目の上映が終わると、敦子は泣き顔を隠して笑ってみせた。
「やだ、マジ泣きして、化粧落ちちゃいましたーちょっと直してきます」
「待って。大丈夫だから」
俊彦は思わず敦子の腕を掴んで止めた。
「大丈夫じゃないですよ、男の人の化粧に関する"大丈夫"はマジで信用ないんですからーマスカラ落ちてパンダになってても気にしないとか言うし」
「そうじゃない。──そうじゃ、なくて──」
俊彦は何と言えばいいか分からず少しだけ視線を下げた。
化粧室に行って、この子は1人で泣くに違いない。
回りがいくら涙目だからってそれこそ敦子の言う「マジ泣き」と、「映画を観て泣いた涙」は違う。
ここで彼のことで泣いたらこの後が持たないとか、自分に悪いとか
どうせそんな事を考えているに違いない、俊彦はそう考えていた。
「1人で泣くな、飯島」
ぎゅっと腕を掴むと、その力強さと体温に神経でも触れられてしまったかのようにぺたんと敦子はイスに座ってしまった。


