映画は見て見ぬようなものだった。
途中で主人公のコネリーが「こんな現実なら、知らないままの方がよかった!」と叫んだ言葉だけが気味が悪いくらい耳に響く。
席を立つことができない。
逃げ出したいのに逃げ出せなかった。
「飯島大丈夫か? 具合でも悪い?」
明るくなり人が動き出した映画館で、俊彦がこちらを覗き込んできた。
「なんか飲み物……」
そう言って顔をあげると、視線の先に潤と千恵の姿がしっかりとフレームインしてしまった。
ば、と勢いよく視線を下げて、俊彦まで隠れるように身をすくめた。
自分が恋愛映画を見に来たということ知られる、知られない以前に敦子と一緒にいることが気恥ずかしかった。
そして、ふと──敦子を見た。
敦子は映画館の前の席番号「G-18」という数字をじっとみたまま、視線を下げていた。
瞳は不安そうに揺れていて、涙が落ちそうだった。
2人の存在に気が付いたとしか思えなかった。
……気づかなかった振りをしよう、俺は何もみてない。
俊彦はそう思って、静かに顔を上げた。
人の波のせいか、向こうはこちらに気づかないままで、出遅れた俊彦と敦子は、2度目のスイート・シーズンズを見ることになった。
暗闇の中でも項垂れた敦子の影が、見てとれた。
俯いていた彼女は終盤にさしかかると、膝に額をつけて、完全に俯いてしまった。
泣いているのが分かった。
「……飯島」
あちらこちらで、泣き声の輪唱がはじまっていて、敦子が泣いているのに誰も不信感を抱かない。
途中で主人公のコネリーが「こんな現実なら、知らないままの方がよかった!」と叫んだ言葉だけが気味が悪いくらい耳に響く。
席を立つことができない。
逃げ出したいのに逃げ出せなかった。
「飯島大丈夫か? 具合でも悪い?」
明るくなり人が動き出した映画館で、俊彦がこちらを覗き込んできた。
「なんか飲み物……」
そう言って顔をあげると、視線の先に潤と千恵の姿がしっかりとフレームインしてしまった。
ば、と勢いよく視線を下げて、俊彦まで隠れるように身をすくめた。
自分が恋愛映画を見に来たということ知られる、知られない以前に敦子と一緒にいることが気恥ずかしかった。
そして、ふと──敦子を見た。
敦子は映画館の前の席番号「G-18」という数字をじっとみたまま、視線を下げていた。
瞳は不安そうに揺れていて、涙が落ちそうだった。
2人の存在に気が付いたとしか思えなかった。
……気づかなかった振りをしよう、俺は何もみてない。
俊彦はそう思って、静かに顔を上げた。
人の波のせいか、向こうはこちらに気づかないままで、出遅れた俊彦と敦子は、2度目のスイート・シーズンズを見ることになった。
暗闇の中でも項垂れた敦子の影が、見てとれた。
俯いていた彼女は終盤にさしかかると、膝に額をつけて、完全に俯いてしまった。
泣いているのが分かった。
「……飯島」
あちらこちらで、泣き声の輪唱がはじまっていて、敦子が泣いているのに誰も不信感を抱かない。


