√番外編作品集

適当に藤田が俊彦に挨拶を投げる。

返事は期待していなかったのか、藤田は笑いながら続けた。

「特進の黒沢はもう諦めた訳? プッ! あいつフられたんだ、笑えるーいいもん見ましたー」

「潤は関係ないから」

「飯島、こいつ……」

「何でもないない! ただのクラスメイト。バカ男!」

俊彦の質問に、敦子は答えたくなかった。

一時期でもこんな男と付き合っていたなんて知られたくなかったのだ。

「元カレにバカ男ってのはなくないか? 飯島の新しい彼氏に印象悪いじゃん」

あんたの印象なんて堀口さんに残したくないんだってば!

「あのさ、またナンパ失敗してイライラしてんだかなんだか知らないけど、もう別れたんだからいつまでも元カレとか言うのやめてくれる? そういうの迷惑だから」

「迷惑はねぇだろ、お前が…」

藤田が何か言う前に、俊彦は持っていた立幸館のカバンを置いて藤田のブレザーの襟を掴んだ。

「えぅ!?」

「おい、お前さ、空気読めない男?」

「何だよ何だよ手出すってか? いいのか? それって」

3年生はこの時期に進学や進路を決めた人が殆どで、暴力沙汰になれば内定取り消しだと言うことくらいみんな知っている。

それを含んだ藤田の発言にも、俊彦は動じなかった。

「人が口説いてる最中に邪魔してくるんじゃねぇよ!」

一喝して掴んだ襟を一度自分へ引き寄せるとぱっと手を離し、勢いをつけて突き出しをした。

勢いに任せ、藤田はよろめいて尻餅をついた。

「ッてぇ…なぁ、何キレてんだよ!」

「ちょっ、ちょっ、ちょっと!」

敦子が間に入る間もなく藤田が起きあがる。