落ちたケータイを、『私』はゆっくりと拾い上げて画面を見つめた。


待ち受けにはこの前撮ったプリクラが表示されていた。


血で汚れたその画面を『私』……
私の中の√の女が、ゆっくりと親指の腹で擦った。


「黒沢……」

私の口が、勝手に開いた。
今、体の中にいるのは、私ではなかった。

そう、私を支配しているのは

「潤、あなたの名前は、潤」

√の女は、えたり、と微笑んで目を閉じた。



「──会いたかったわ、潤」






END Thank you!