河田君はクラスでも背が高い方で茶髪にピアス、カラーコンタクトに校則違反のグレーのカーディガンという、どこから見てもギャル男だった。

目を合わせたら飛んでくるからダメ、と沙織が言ったので少しだけ逸らす。

「なんでこのクラス入れたんだろ、ちゃんと面接したのかな担任」

沙織が憎々しげにストローを潰しながらジュースを飲む。

河田君のことを色々言ってるけど

沙織もストローを噛んで飲むクセはやめた方がいいと思う。

品がないよ。

「まぁ、成績発表があれば分かることだよ、ねぇ、千恵、沙織」

進級後の中間テストで大体「できる」「できない」は周知されるものだから、そこで河田君がダメなら「バカなひと嫌」とか言ってしまえばいい気がする。

一応、進学クラスだし、そういうやり方もあると思う。

人間的にいいかは別として。

ここは学校で、勉強をするところなんだから。

だからかな。

数学の時間の、張りつめた空気が好き。

問題を解いて、と先生からこちらに振られた時の

38人が一斉に自分と問題だけに集中する瞬間。


みんなライバルなんだからねと、肌で感じる瞬間。


気合いが入る。