金銭的な理由もあって公立にどうしても行きたかったのだが、試験結果だけは誰にも左右できない。

公立高校の試験に落ちて、私立受験した立幸館へ進学した。

金銭的な不安は、好成績で入学したことによる特待生扱いでどうにかなった。

だが特待生として在校する限り学校の指示には従わなくてはならず

進学する気持ちも、費用もないのに、七海は大学受験対策の模擬試験を受けていた。


今回の模擬は結果が全国の系列私立高校・塾に配布されることになっていて

各教科上位に「立幸館」の名前が掲載されることを学校から望まれていた。


大人の事情だ。


同じ事情でこの会場にいる、立幸館の学生は他にも4人いた。

中には、七海にとって数少ない友達の吉沢アヤトもいるのだが、教室は一緒になれなかった。

この中の、一体何人が進学を望んでこの模擬を受けているのか

七海は正直疑問だった。

友達の吉沢アヤトも調理師になるために、専門学校かそのまま就職かどちらかだと断言していた。

ふと、七海は意識を他にとられている、と気を引き締めた。

他の誰かの事情を考えてもしょうがない。


特待生として高校に在籍しているなら、それなりの成果をあげるべきだ。

進学に夢はなかったが、高校だけは卒業したい。



七海は頭の中を真っ白にして、ひたすらマークシートを塗りつぶしていった。