「河田先輩、スーツ似合う!」

後ろの席にいた敦ちゃんの後輩が、声をかけてくる。

「まぁねーこれ、俺の魔法使いが選んでくれたからさ」

「なにそれ? 魔法使い?」

早苗さんも妖艶に微笑んで静かにソーダを口にする。

ウィンクをすると、早苗さんは苦笑した。

「シンデレラだよ、シンデレラ。お姫様にはさ王子様も必要だけど魔法使いだって不可欠なの」

「えー、それじゃ河田先輩がお姫様なの? やだぁー!」

後輩の笑いを取るつもりはなかったのだが、それが思い切りツボに入ったのか周囲は大爆笑になった。

ホストっつか、ほんとうに女装喫茶にした方が実はもっと良かったんじゃないか?

とか、今思った。

「じゃあ、お姫様コウちゃんに乾杯」

早苗さんは手元のグラスを持ち上げて俺の前に掲げた

「ただし王子様はまだいないみたいだから、がんばってコウくん応援してあげなきゃね」

その言葉に、後ろの席にいた敦ちゃんがめちゃ爆笑した。

ひどいな……

「俺は、魔法使いに乾杯だけどね」

黒沢が俺の真後ろで小さく呟いたので、頭を上げてトンと接触した。

「激しく同感」

俺が早苗さんに伸ばしたペットボトルに、黒沢のオレンジジュースが伸びる。

早苗さんは少し驚いたようだったが、いつものように妖艶に微笑むと軽くグラスをかかげた。





「あんたたちの、まだ見ぬ女神たちに乾杯」


END Thank you!