長い時間いるわけじゃないんだけど…。


その何十分かが、だんだん貴重になっていくのが、分かる。


「マジ、尊敬する…絵なんてさっ!俺、全然ダメだし…」


清々しい眼差しで言う。


「あ、ごめん!集中出来ないよね〜!?」


確かに、緊張して彼が来るたびに、色鉛筆の色合いさえ微妙に変わる。


「……あの、大木の葉っぱの光や影を出すのが、結構難しいんだ!」


「へぇ〜」


うんうんと、頷きながら大木を眺めてる春輝くん。


もしかしたら?


あのビンタをした、彼女を思い出してるのかな?


それとも?


彼女を待ってるとか?


変な疑問が、心の中に渦巻く。

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