「織閖が、身請けされることになったんだ。」









女将と向かって座る雪洞は、微動にださなかった。








女将の隣で俯く織閖を、静かに見ていた。









「何故、その事をわっちに告げるんでしょう?」








女将は、苦笑した。








「聡いお前のことだ。分かっているんだろう?」








「ふふふ。桃の事でありんすか?先日、松を引き取るとお話になったと思いんす。」









「ああ。遊女に禿は一人で十分だ。花魁ともなれば、必要かどうかも分からない。」








女将は、織閖に目をやった。








「織閖の望みだ。桃を、雪洞に預かってもらいたいそうだ。」