「千寿姐さん。安原様がお越しになりました。」








障子越しに言う、禿の言葉に千寿は舞い上がった。








「わかった。すぐに行く。場所は・・・」








「華の間でありんす。」








千寿は意気揚揚と、禿を従えて廊下を歩く。








安原信一 ヤスハラシンイチ。







名家の次期跡取り。








誰もが焦がれるその容姿。







馴染みにしたいと思った遊女が、数十人。








しかし、安原信一はその中の、千寿を選んだ。