情報によれば、新型ロケットは太さも長さもテポドン2号の3倍以上で、その燃料は画期的な固体酸素燃料と固体水素燃料であることが確認された。

 K共和国の開発した固体酸素燃料と固体水素燃料は、固体燃料の利便さと液体燃料のエネルギー効率を活かした画期的なものだ。

 その上、彼らの固体酸素燃料と固体水素燃料は非常に高密度で、液体燃料に比べて5倍の体積に匹敵する燃料搭載が可能になったらしい。

 この事は、新型ロケットの射程距離がアメリカ大陸どころか、火星まで行って帰ってくる程の能力があり、搭載可能重量も飛躍的に増大された事を意味していた。
 
 どうやら、K共和国の軍部・技術者は「核の小型化」に失敗し、それなら「でっかい核をそのまま運ぼうぜ」という事から、馬鹿でかいロケットとそれに必要な新型燃料の開発に成功したらしい。

 このことが、どうやら本当らしい事は、日頃何事もひた隠しするK共和国が、連日自信たっぷりに新燃料の詳細や、ロケットの発射準備状況をTVで報道し、この成功を記念して改めたロケットの名前を、アナウンサーのおばはんが例の喧嘩腰イントネーションで「デカボン1号、デカボン1号」と絶叫している事からも伺えた。

 もっとも、デカボン1号の開発のために、国民の99%が第二次世界大戦中のアウシュビッツにおけるユダヤ人にも劣らない悲惨な状況にあることは、一切報道されなかった。

 当然の事ながら、デカボン1号の発射予告は世界を震撼とさせ、さすがのお友達中国、ロシアも真っ青になって、あの手この手で懐柔策を講じたが「新型燃料のノウハウが欲しいだけだろう」とK総書記長から罵られる有様だった。

 発射を止める手段はK共和国への先制攻撃しかないが、僅か30kmの休戦ラインを挟んで首都を構える隣国D国が、壊滅的被害を受ける事を想定すると簡単には実行できないジレンマに陥っていた。

 日本海と太平洋、大西洋には世界中のミサイル防衛艦隊が集結して、デカボン1号の迎撃に備えていた。

 K共和国は、デカボン1号がコースと、搭載物だけは沈黙していて「とりあえず打ち落とそう」ということで各国が一致した結果だ。

 なにしろ、核が小型でなくてもOKなほど、馬鹿でかい搭載能力があるのだから。