「光秀、わしは決してこの所行を許さぬ。土岐の一門にとって許してはならぬことじゃ」
 縄を打たれた形相の頼芸が光秀に憤懣をぶちまける。
恵林寺が燃え尽きて鎮火すると信忠は若狭の武田五郎信景と佐々木二郎高定に切腹を命じた。
『これで二郎様を永遠に安全な場所へ移し申し上げることが出来る』
 勘助は喜んで刃(やいば)を腹に当てた。

 光秀の叔父五郎と二郎の影武者勘助は燃え尽きた楼門の横で同時に腹をかっ割いて果てた。
土岐頼芸については高齢であることを理由に、かつての重臣稲葉一鉄に身柄を預けられ、その夜のうちに信忠に従軍している一鉄の孫、典通に引き渡された。