「分かんない-っ!!」


机の上に散らばる教科書の上に、たった今開いていたノートを投げ捨てて琴羽は叫んだ。


ぱら、と教科書をめくりつつすぐにぱたんと閉じてしまう琴羽。

只今テスト勉強の真っ最中。

先日蓮が1位をとったこともあって、自分も負けていられないと放課後の勉強を決意したのだ。


数分までは。



「はぁ…」


誰もいない教室で静かに息をつく。


「なんでいつも寝てばっかの蓮は1位で、ちゃんとノートとってる私はあんなに成績が悪いのよ!」





「生まれ持っての才能ってやつ?」





「!?」


呟いただけの言葉に返事が返ってきて琴羽は驚いた。

慌てて教室の入り口を見ると、いつからいたのか蓮が立っている。


「お勉強ですか?」

「……」


にやにやと意地悪そうに笑いながら蓮が近づいてくる。

適当に教科書を手にして、ちらっと琴羽を見下ろした。


「教えてやろ-か」

「いい」


ばっ、と教科書を取り返し、蓮を睨み付ける。


「なんであんたがここにいんのよ」

「帰りにお前1人で勉強するって友達に言ってただろ?
どうせ1人じゃはかどらね-だろ-と思ってさ」

「…え」


確かに帰り際、どこか寄っていこうと誘ってきた比奈や優に、勉強するからと断っていた。

それをたまたま聞いたのだろう。


でも…




わざわざ来てくれた…?




「まぁ、琴羽さんはいいみたいなので、俺は大人しく帰りま「待って!!」


ぐいっと蓮の腕を掴んで引き留める。


「…なに?」

「……ぇて」

「え、聞こえない」



棒読み。



(こいつ…ッ!!)


拳を握りしめて蓮を睨み付ける。


「いいのか、そんな拳握りしめちゃって」


「…ッ…」


「はい、もう一度」


「教えて…くださ…い」




意地悪なアイツ
(最初からそう言えばいいのに)
(うるさいな)




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