「このプリント、私がまとめておいたんだけど」

「…ふぅん」




だから…?




睨み付けられても…ね…
なんて思いながらその視線を受け流し俺は支度を再開した。

近付いてくる足音。


「プリント、親に見せなさいよ」

「なんで」

「先生が言ってたから」

「あっそ」

「あっそって…」




なんなんだよ、こいつ。




気が強いのか、単に担任の言葉からくる責任感か。

とにかく今の俺を苛つかせるのには十分だった。

俺は鞄を掴むと、女と初めて目を合わせた。


「琴羽だっけ? いいこと教えてやろぉか」

「え?」


俺の言葉に、女の目が一瞬揺らぐ。




ほら、結局びびってんだろ。

女に変わりはない。




「俺に関わらない方がいいよ。じゃあな」




鬱陶しいから。




その言葉は敢えて伏せておいた。

泣かれても困るしね。

でも自覚してた。




俺の瞳の冷たさを。

目の前の女の表情から読み取れる。




強気なとこにちょっと期待したけど、結局同じかよ。




「馬鹿じゃねぇの」


ぼそっと呟いて廊下を歩いていると、背後から叫び声が飛んできた。


「プリントのお礼言ってけぇっ〜!!」

「!!」


思わず足を止める。

しばらくたった今出てきたばかりの教室を振り返ると、あの女の怒りの呟きがかすかに聞こえてきた。


「はっ…。変なやつ」


思わず笑い声が漏れた。




やっぱ他の奴らと違うかも。