「観光じゃ、ないです」



お兄ちゃんは握りあっている手を胸の位置まで上げた。


「俺達、ここで新しい生活を初めようと思ってます」


「お!もしやの、もしかか?!」


ひゅーひゅ♪と古い合いの手が飛び交うなかお兄ちゃんとあたしは目を合わせて笑いあった。


「俺達、夫婦なんです」


ふ…夫婦。

夫婦。

夫婦。


まさかお兄ちゃんがそう言ってくれるなんて……!



「何ニヤニヤしてんだよ」

からかうようなお兄ちゃんの視線からプイッと顔を背けた。


「しっしてません!」


またひゅーひゅー♪と合いの手が飛び交かった。

その瞬間。

あたしは忘れていた。


あたし達がー双子の兄妹である事を。


何も知らない彼等の祝福にこれほどない幸せを感じながら、こんな時間がずっと続けばいいのに…とそっと願った。