『赤くなってるけど、冷やせば今夜には腫れは引くと思うけど…』


たまきが加奈子に呼ばれてイタリアンの店の前に着いたのは23時を少し過ぎた頃だった。


コンビニに寄り、頬を冷やすものを買って加奈子の自室で落ち着いた。


加奈子は訳も話さずに、呆然としているが、たまきには何となくわかっていた。


先日、坂本と食事をしていた時に同じ店に会社の同僚の女性が居て声を掛けられた。

二三言葉を交わすと、その女性は連れの女性と店を出て行った。
たまきが坂本を見ると、気まづそうな顔で言った。
『さっきの女性、横溝の女…横溝は加奈子さんと会う前から別れを告げてるんだけど、彼女が了承しなくてな…』
たまきはその事を加奈子に話せないでいた。


『加奈子…』


たまきが加奈子の顔を覗いて言った。