転校生と言うものはどうしていつもチヤホヤされるのかしら?
ヤツも例外では無い。

あ~嫌だ嫌だ。
女の子に囲まれてデレデレしちゃってさ。

ホームルームと一時間目の間の短い短い休み時間。
教室を出たいのだがどこかへ行くだけの時間は無い。

「城積君ってもしかして野球やってなかった?確かピッチャー。去年、甲子園に出てた気がするんだけど」
クラスメイト、高校野球大好きな葛城あやめ。

彼女の情報なら間違いない。甲子園……?

……そんなすごいヤツがどうして野球部の無いうちの高校に?

いかん、いかん。こんなヤツのことなんてどうでもいいんだった。

もうっ!聞きたくなくても聞こえてくる~っ!
耳を塞いでみるが席が隣なため全く効果はない。


「実は……もう野球できないんだ」


「え~っ!!」
彼を囲んでいた女子一同が一斉に驚く。

「肩壊しちゃってね。だから転校したってわけ」

そっか……だから野球部のないウチの高校に。
って!同情している場合じゃないのよ。
あいつは私の敵なんだからっ!!

「お~い!立花!戸坂先生が呼んでるぜ。職員室来いっさ」
クラスメイトの荻野がそう私に告げる。

「はぁ~い」
半分やる気のない声を出しノコノコと職員室に向かう。
まぁ、あの空間から抜け出せたことは有り難いけど。

因みに戸坂先生はウチのクラスの担任。
そして……私は学級委員長を務めているんだな、これが。