片手には相棒の8ミリメンソ。 真知子の部屋のあちこちには100円ライターが転がっている。 いつも必要なときに手元にない、わがままなヤツ。それは増殖して、今や真知子の全ての鞄に一つずつ入っている。 真知子はあご先で切り揃えられた黒髪を耳にかけ、机の上のライターを一つ手にとった。 椅子の背もたれに体重を預け、天井に向かって煙を吐き出す。 それは、至福の瞬間。