「ていうか、嘘言ってるんじゃないの」
だっておかしいよ。楢橋が極道一家の息子じゃない?
「ちげーよ。おれら、見たんだ。楢橋が『竜』って居酒屋の裏口入ってくの」
「居酒屋?」
「そう。しかも名前が『竜』だろ?楢橋の名前も」
「竜。」
「だろ?だから、あくまでおれらの推測なんだけどよ、楢橋ってそこの居酒屋の息子なんじゃ…」
…居酒屋。
本当に楢橋が居酒屋の息子だとしたら…
「おい。俺の机の前で何やってんの」
冷たく言い放ったその声は、そう、楢橋だった。
「あっ、すいません楢橋さんっ」
「すぐどくんで、ごめんなさいっっ」
そう言って山田くんと佐藤くんは逃げるように自分たちの席へ戻って行った。
「…何。」
楢橋が不思議そうに見つめてくる。
直接は、聞きづらいな。
…ま、そのうちわかるか。


