「いやー、あれは痛かったでしょ」 「痛くねえよ」 「うーそだー」 楢橋と咲子が言いあいながら、教室へ戻っていく。 「きーちゃん大丈夫か?」 「あの人たち最低だよ」 愛ちゃんと圭斗くんがあたしを心配してくれて、 明日美ちゃんは、現場に走ってきた先生に事態を説明してる。 山森くんは一人その後ろを歩いてて… 何事もなかったかのように、辺りは普通だ。 ただひとつ、残っているのは、あの大きな壁の傷と、楢橋の赤く、切れて血がにじんでいる手だけだった。