「ね!!!キサキ!!!」
大掃除の時間、教室前の廊下を掃きながら咲子が言った。
「なに?」
「キサキさ、いつの間に楢橋とフツーに喋ってんの!驚いたよ昨日は敬語だったじゃん」
そっか。咲子と別れてから楢橋と会ったんだもんね。
あたしは昨日あったことを咲子に話した。
「え、マジ?!楢橋ってそんなやつだったんだ!てか笑ったんだ!」
「…うん」
「2年間同じクラスだった子に聞いたことあるけどさ、笑った顔…てゆーか怒ってるのと無表情しか見たことないって」
「そうなんだ(笑)」
「『そうなんだ(笑)』…じゃないよ!やっぱり楢橋はキサキに何かしら興味あるんだって」
「興味?」
「じゃないとフツー感情見せないでしょ。楢橋ってさ、顔カッコいいから付き合っちゃえば?」
「えー…」
人のウワサが超大好きな咲子に言っちゃえば、一瞬で広まっちゃうじゃん。
付き合ってるってなったら絶対友達出来ない…!
「ま、キサキの気持ちが一番大事なんだけどね」
一言そう言うと咲子は『ゴミ捨ててくる』と言って階段を下りて行ったのだった。


