純と別れてから数分後、
「ただいまー。」
家に着くなり母は玄関まで駆け寄ってきて俺にこう言った。
「彩(サエ)の様子が変なの…」
これで3人目…
…どうやら間違いなさそうだ…
俺は身の回りに起きている奇怪な事態に、今川焼が絡んでいるとみて間違いないことを確信した。
しかし、それよりも妹の身を案じる気持ちが先走り…
…急いで妹の部屋へと向かった。
「おいっ、彩!」
「…………」
先程と同じ反応を決め込む。
「おいっ……」
「…お…お兄ちゃん。どうしたの…?」
返答があったことに驚いたが、意識があることに心底安堵した。
「どうかしたのはお前だろ…」
「…うん。なんか…お腹が痛くてさ…」
「大丈夫か?医者行くか?」
「平気…たぶん。寝てれば良くなると思うから…」
そう言って寝返りをうった彩の右手の甲に一瞬…
……薄黒い痣のようなものが見えた……
…錯覚だろうか。
「彩、ちょっといいか…」
布団に潜り込んだ彩を起こし、確かめずにはいられなくなった。
「……何?」
「ちょっと右手見せてみろ。」
「何で?」
少し乱暴に腕を引き寄せる。
「っ………あれ…」
白い手は、およそ傷一つなく綺麗に青い脈を打っている。
やはり気の迷い…ただのまやかし…
……それとも……
…もっとも、その先を巡る考えなど何も浮かびはしなかった。



