涼が話していた症候と酷似しているというより同一と見ていいだろう。

俺の目の前にいる彼女はもぬけの殻で椅子にもたれかかっている。


「なあ…これ、おかしいよなぁ…」


心配そうに彼女の手を握りながらも、どこか遠い目をして不気味がる純がいた。




最初に純が俺に相談を持ち掛けた時、真っ先に頭に浮かんだのは磯谷という子の存在だった。

純がおかしいと挙げる症状は涼の話した症状と所々合致した。


だからこそ普段ならカップルのいざこざに関わり合いを持たない俺も、今回ばかりは純の話に親身になって耳を傾けたのもある。

それに相手が見知った純の彼女ともなれば話は別だった……




そして今、俺の目の前にいる見覚えのある彼女は全く別人のように振る舞う。

姿形を剥ぎ取って着せた異形の者が居座っているように思えてならない。


「いつから?」

「昨日の夜…なんか調子悪そうでさ。家まで送っていった時は普通だったんだけど、朝学校で会ったら……」


恵(メグミ)という純の彼女は、普段なら饒舌に減らず口を叩く明るい子だった。

活発なタイプ…




…そう、まさに今と正反対の人物。


「どうしよう…?」

「どうするって…とりあえず病院に連れてくしかないだろう。」


決して投げやりな言葉ではなかった。

それが最善の策だと思った。なのに…




「……ごめん。」




不甲斐なさが声に出た。